思い出「認知症の伯母と」

伯母の認知症と対峙して

 

私の伯母は、生涯独身で高校教師を全うし、退職後も多くの卒業生に慕われ楽しく余生を過ごしていました。

私は同じマンションの別の階に住み、時々手助けする生活が続いていましたが、まさか伯母が認知症を発症するとは思ってもいませんでした。気づいたきっかけは「お金がない」という伯母からの連絡でした。

生活状況を密かに確認した結果、几帳面だった伯母の生活はどこを見ても皆無で大変ショックを受けました。

当の本人は、以前から自分は絶対に認知症にならないとの強い思いがありましたので、検査をするのも介護認定を受けるのも一苦労でした。いよいよ1人での生活が難しいと思われた時、骨折してしまい、これをきっかけに伯母が納得しないままグループホームでの生活が始まりました。

ここまでの間、伯母のプライドを傷つけないことに注力し、自分に「嘘も方便」と言い聞かせながら伯母にはたくさんの嘘をついて事を進めてきました。伯母が一目置いているかかりつけの先生やお寺のご住職にまで一芝居打って頂いた事もあります。色々な方の協力のおかげで伯母の安全な生活が可能になりました。

グループホームでは楽しく過ごしていたようですが、身内が訪問すると馬事雑言を浴びせ睨みつけるので、足が遠のくようになった時期もあります。コロナ禍で訪問できない日が続く中、施設で体調が悪化し、すい臓がんと診断されました。

 

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緩和ケア病棟に入院した伯母は、人が変わったかのように穏やかになっていました。緩和ケアでは可能な限り、何でもさせてくれます。お酒が飲めると知った時のうれしそうな顔は今でも忘れられません。伯母も認知症を発症してから自分の変化に少なからず気づき、つらかったと思いますが、1ヶ月半の緩和ケアでの生活は、伯母がグループホームで満たされなかったことを取り戻すかのようなご褒美の期間でした。認知症だった伯母が私の対応をどう評価しているかはわかりませんが(笑)私はしてあげたい事をできる限りさせてもらってありがとう!と伝えたいです。